新任の挨拶と研究室紹介
赤松 茂


本年4月よりシステム制御工学科のメンバーに加えていただいた赤松茂と申します。どうかよろしくお願いいたします。
はじめに私の研究歴を簡単に紹介させていただきます。私は昭和52年に日本電信電話公社(現在のNTT)に入社し、電気通信研究所において、まずは手書き漢字読取装置(OCR)の研究・実用化、その後は人間の顔やその表情・ジェスチャをコンピュータで認識する視覚パターン認識の研究に携わってきました。そして平成4年3月に関西学研都市(京都)に設立されたATR人間情報通信研究所に出向し、人間の高次視覚情報処理に関する研究の立ち上げと推進にあたってきました。具体的には、人間の感性をイメージで伝達するメディアとして重要な役割を果たしている「顔」を研究対象としてとりあげ、人間が顔から認知する類似性・印象・感情などのイメージを左右する要因を科学的に分析するとともに、人間のイメージに即して顔画像を分類したり、イメージにマッチする顔画像を生成したりする顔画像の認識・生成技術の研究に取り組んできました。そして9年間の時限プロジェクトが本年2月に終了するのを機に、今後は大学における教育・研究に取り組んでいこうと考えた次第です。
 ところでこれからのシステム技術では、工学的な成果物としてのシステムをいかに人間にとって使いやすいものにするか、いかに人間の感性に訴えかけてその心を動かし満足感を与えるかといった視点にたち、人間科学に基礎をおいたソフト技術の重要性がますます高まっているものと思います。こうした時代の要請に応えるためには、従来の工学を支えてきた物理・数学に立脚した基礎技術ばかりでなく、知覚、認知、情動、感性などといった人間の脳機能に関連する研究成果を工学的課題の実現に活かしていくという人間情報処理技術を身につけた技術者を育成する必要があるでしょう。私自身がこれまでに取り組んできた視覚パターンの認識はこのような人間情報処理技術の一翼をなす重要な研究課題ですので、その経験を多少なりとも基礎教育に活かすことで、人間情報処理技術の発展を担う人材を本学において育成することに微力ながらも貢献できればと願っています。
 こうした願いをもって、コンピュータに人間を理解する目の働きをもたせることで優れたヒューマンインタフェースの実現を目指すヒューマンインタフェース研究室を発足させました。そして、人物像から人間が認知している感性情報を計測する技術と画像認識・生成技術との融合をはかる研究に着手しています。
 とはいえ、大学での教育活動に関してはまったくの新米ですから、右往左往している毎日です。今後とも皆様のご指導・ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。